L70(A)製作記 その1

近年のミニスケールキットの充実ぶりを見て、出るか出るかと待っていましたが、その気配もないので自作することにしました。

1 使用キットと設定

みなさんはこの車両をどう呼んでいますか?
ツヴィッシェンレーズンク? アルケット・ヤクトパンツァー? それともL70(A)?
とにかく「あの」不格好な車両です。私は好きですけどね。

独軍車両は詳細な資料があるので、パーツの形状変更の変遷や時期がはっきりしています。 今回は「1944年11月生産車」という設定で製作します。

基本的には4号J型の最後期型がベースで、一番の特徴は製造簡素化のために上部転輪が4個から3個になったことです。
さて、どのキットからどのパーツを使いましょうか。

2 車体下部の比較

手持ちのキットを比べると、以下のようになります。

【A】ドラゴン L/70ラング
  上部転輪は3個で最後部(右側)が一段下がっている。
  側面給油口はラング専用の位置

【B】ドラゴン 4号突撃砲後期型
  上部転輪は3個だが、最後部がちょっと上気味。
  給油口の位置は戦車型.。後部に履帯ピン押し込み板も再現  

【C】レベル 4号J型
  上部転輪が4個、最後部(右側)が一段下がっているのはOK。

3 車体下部の修正

ということで、車体下部は上部転輪が3ケで給油口位置が正しい「B」 ドラゴンの4号突撃砲後期型を使うことにしました。
修正部分は以下のとおりです。

【側面】
 ・第3上部転輪の位置が前すぎ、高すぎる
  →1ミリほど斜め後方下側に移設

【後部】
 ・誘導輪の位置が少し低い
  →車軸を1ミリほど上方に移設
 ・誘導輪調整装置
  →プラ板を追加して形状を変更

4 ボギーの修正

別パーツになっているボギーを、車体側にある凸に接着するのですが、仮組みしてみると、どうしても浮いてしまって車体に密着しません。
そこでパーツの裏面を見てみると、凸にぴったりはまる凹の内側に荒れがあります。

決して固定用の出っ張りなどではありません。車体側はフラットですから。
で、左右で8ケあるボギーのパーツの裏面の凹内のデッパリを丁寧にナイフで削ってから車体側面に接着しました。
このあたりはいつものドラゴントラップですね。

また、ボギー基部のボルトを2つ削り取りました。(赤い囲みの部分)
最後期型では、この部分のボルト2ケが製造工程の省力化のために廃止になっています。
キットパーツではボルトがついていて、それ以前の仕様になっています。
このあたりも4号を製作する際の定番工作ですね…1/35の場合ですけど。

5 車輪の修正

【起動輪】
彫りが浅かったのでスポークを削り込んでプラ板でリムを修正しました。

【転輪】
ドラゴンのL/70ラングから鋼製転輪を流用
(ランナーには8ケの鋼製転輪がついていて「お得」です。)
通常の転輪と鋼製転輪のハブキャップの違いはわずかなのですが、並べると違いが判ってしまうので、通常の転輪から流用して同じ形状に揃えました。

6 車体上部の製作@

車体下部は、エンジンデッキまわりの表現が繊細なレベルの4号J型を使いましたが、ドラゴンの車体下部と特別な修正なしにフイットしました。 

戦闘室はドラゴンのL/70ラングから流用しました。

@ 戦闘室後部は天板の後端でカット。
  天板の後端がエンジンデッキの端になる位置にして、前端が操縦席前面板に合う位置でカット

A 戦闘室後面の板
  高さは、戦闘室の天板が水平になる位置に合わせる
  台形の上辺の幅は、天板の幅に合わせる
  下端が車体の幅に合うように左右を斜めにカット

B 戦闘室前面の板
  高さは、操縦席前面板の幅に合わせる
  台形の下端は車体の幅に合わせ、左右は後面の板と同じ角度でカット

7 車体上部の製作A

C 戦闘室を接着し、前面の左右のはみ出た部分をカット

D 透過防止に内側を黒で塗装したあと、側面装甲板は1ミリプラ板で再現

8 戦闘室の修正

【ハッチ】
戦闘室天板の2つのハッチの大きさを修正しました。

左側の四角い車長用ハッチは少し小さいようなので、ナイフで開口部を大きくしました。
右側の丸い装填手用ハッチは逆に少し大きいようなので、内側にプラ板を巻いて径を小さくしました。

【防盾】
戦闘室前面に接する部分(=底辺)を薄く削りました。

9 表面の加工

【圧延鋼板】独軍戦車の装甲板である圧延鋼板の再現です。
35では接着剤で表面を溶かしてから金ブラシで荒らすといった手法が一般的ですが、その方法を72でやると大げさになりすぎてしまいます。
そこで、タミヤパテをサーフェイサーで溶いた「ドロドロパテ」を、硬い筆で叩き塗りして表面を荒らします。
硬化後、400番の紙ヤスリで表面を撫でで整えます。

防盾は鋳造なので、上記と同じ手順で表面処理をしますが、紙ヤスリで撫でるのを控え目にして、荒れを残したままにします。

また、運転手視察孔左右の尖頭ボルトはチャーチルの時と同じ手法(ナイフでえぐったV字の穴にランナーを押しつける方法)で作りました。
ちょっと大きすぎたかなあ。

10 フェンダーの修正

フェンダー上面の滑り止めは、一体モールドされた工具と一緒に削りとってしまったので、いつものようにタバコの内紙を貼って再現しました。
レベルの本来の滑り止めモールドは繊細できれいな出来だったので、パターンの違うタバコの内紙を使うのは残念です。

その他、前後のフェンダーにプラ板でディティールを追加したほか、戦闘室前後の車体との接合部をプラ板で追加しました。

11 車体の仮組み

長い砲身や転輪などを仮組みしてみると、この車体の特徴的なシルエットが現れてワクワクしますね。

誘導輪は鋳造製にしたかったので、レベルから流用しました。

 

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