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1 キットと製作方針 私は今まで2つのルールを決めて模型を作ってきました。
@欧州戦線に限定して作る
→資料を集めるなど、限りある時間の中で内容の濃い作業をするため
ACDケースの大きさ(約13センチの正方形)で作る
→空間を狭くすることで、情景に密度を持たせるため
保管のしやすさもあります。
ま、チャーチル架橋戦車では橋の部分が大きくはみ出ていましたが。
今回は、このルールを2つとも適用しないで製作します。
いつもと比べると、ベースの大きさは3倍くらいかと思います。
…だってこのキットを作りたかったんだもん。
ということで、「スキャンメル タンク トランスポーター」(以下「スキャンメルTT」)です。
2024年現在、76のエアフィックスのキットのほかはIBGから72で出ているだけです。
しかも50年前の76のほうが出来がいいと言われているほど、IBGの評判はよくありません。
ただ、海外では英軍車両は人気があるので、このキットもきちんと手を入れて作った先輩たちがいるので、修正ポイントははっきりしています。
資料はこの「薄い本」。
35のサンダーモデルがスキャンメルを出すのに合わせて出版されたそうですが、こちらには正確な図面がついています。
もしかしてこの本読みながらIBGのキットを修正できるようにするために出した?(笑)
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2 改修のポイント 【トラクター部】
@ キャビンの縦横比が違う
横幅が足りず全長が長いので実車よりスリムな印象です。
A 後輪の直径が小さい
重量物をけん引するため後輪タイヤが大きくなっていますが、それが再現されていません。
【トレーラー部】
スキャンメルTTのトレーラーには「前期型」と「後期型」があります。
IBGのキットは1943年後半に出た後期型ですが、1942年のアフリカ仕様の塗装図とデカールがついています。
例えれば、4号J型のDAK仕様みたいな感じでしょうかね。
このキットを作る場合、後期型のまま作って緑に塗るか、前期型に改造してサンドカラーにするかの二択です。
私は後者を選び、トレーラー前端を「グースネック」と呼ばれる前期型に修正します。
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3 シャーシの製作@ 説明書を通読して、手を入れる部分がどこなのか?筆塗りで塗り残しが出ないか?といったことを考慮して組み立てる順番を考え、まずはシャーシからスタートしました。
見えなくなる部分はそのままにして、前後の見える部分を中心に手を入れました。
IBGのキットは多少粘り気のあるプラで、湯口は非常に大きく、パーツギリギリで切り離すと表面が掘れてしまいます。
湯口はパーツから少し離れた部分でカットし、ナイフやヤスリで丁寧に処理することをお勧めします。
【前側】
@ エッチングが付属していますが、形状が全く違うので0.25ミリ厚プラ板で自作
A クランクハンドルのガイドを追加
B 側面の牽引ワイヤーガイドも自作(ちょっと大きかったかも)
【中央部】
車体中央部にあるウインチは、ほとんどがキャビン下に入って見えなくなります。ただ、チラリと見える後ろ側は、ゴチャゴチャとパーツが多いので、省略されたパーツをプラ板で再現して情報量を増やしました。
実車の画像も多くありますが、各パーツの位置関係などは35キットの組立説明書を参考にしたほうが、頭の中で情報を整理しやすいです。
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4 シャーシの製作A 【後側】
@ 後ろから見たときに断面が薄くみえるようにプラ板でリセット
A 滑車は断面を削り込んでワイヤーが通るように溝を彫りました。
B トレーラーとの接続部も、もっさりした出来だったのでプラ板で自作
C 板バネ部も詳細を再現してディティールアップしました。
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5 車体の製作@ IBGのスキャンメルはいろいろ問題がありますが、一番大きな問題は、トラクターのキャビンのサイズです。
詳細な検証はMissing-LynxでMr.Mark Daviesがやっているこちらを見ていただくとして、簡略化した修正点は次のとおりです。(左図は左側を前方としてキャビンを真上から見たもの)
【床面】
@横幅が3.8ミリ足りない
A車体側面中央部の折れ線が1ミリずれている
これを修正するため、以下の作業を行いました。
@前側の台形のパーツは前後長を1ミリカットし、左右にプラ板を追加して増幅
A後ろの長方形のパーツは後端に1ミリ分プラ板を追加
増幅は中央部に0.5ミリ、左右に1.6ミリづつプラ板を追加しました。
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6 車体の製作A 床面の前後長を修正したので、側面パネルも床面を基準に修正します。
(前側パーツは1ミリ減、後側パーツは1ミリ追加)
幅の修正だけでなく、ドア下部分(サイドシル)の形状も違うのでこちらの修正も必要です。
【第1段階】
まずはドア、サイドパネル、サイドシルの3つに分割します。
ちなみに側面パネルのリベット位置がなぜかズレているので、あとで修正が必要です。
【第2段階】
@サイドシルは上側のリベット部が余分なのでカット
Aここでカットして、内側を0.2ミリづつカットして横幅を合計0.4ミリ狭く加工
Bここでカットして、プラ板をはさんで横幅を1ミリ広く加工
【第3段階】
前後のドアも修正
@前部パーツは全体で1ミリ狭くするうち、サイドパネルで0.4ミリ狭くしたので、ドア部左右で0.3ミリづつ狭くして、合計0.6ミリ狭くして、全体で1ミリ狭く加工
また、サイドシル部をカットした分、高さが足りなくなっているのでプラ板を追加
A後部パーツでもサイドシル部をカットした分、高さが足りなくなっているのでプラ板を追加して上下長を修正
B後部パネルの下部は正しい形状になっているのに、前部パネルの下部は下まで貫通していないので加工
修正後はこちら↓
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6.5 サイドシル問題 床とドアの開口部の高さが合っていないため、ドアを開けた状態で再現する場合は加工が必要です。
サイドシルの高さを修正し、さらに床面パーツの厚さをサイドシルに合わせることで、ドア開口部と床面がツライチになります。
こういう基本的な部分で勘合がうまくいかないのは、このキットの設計者は実際にパーツを組んでいないんでしょうかね。
@キットパーツの底面同士をそろえたため、床板がサイドシルより下がっている
Aサイドシルにいらないモールドがあるので、上側をカット
Bサイドシルをカットした分、ドアの全高が足りなくなるので、ここにプラ板を挿入して元と同じ高さにする
C床面をサイドシルと同じ高さにしたため、底面に段差ができたのでプラ板を追加して高さをそろえた
D床板とサイドシルの高さが同じになり、ドアを開けたときに正しい床板の高さになった
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7 車体の製作B 【運転席】
@側面にマップケースを追加
A床面横幅増幅に合わせて、ウインチ操作レバー基部も2ミリほど外側に移設
B中央部のエンジン隔壁は少し角張った形に修正
C座席下の収納箱も追加
Dシート背板はプラ板で自作
また、運転席でウインチを操作するのでフィギュアを自作し、シートの脚は平板なエッチングを使わずに0.3ミリ真鍮線でリセットしました。
なお、運転席後部の隔壁は、フレームの前側にパネルが貼ってありますが、キットパーツでは裏返し(フレームが前側)になっていたので、プラ板で自作しました。
また、後部パネルも中央部にウインチの点検用のフタがモールドされているので、この部分だけを流用し、左右は隔壁と同じように3.8ミリ拡幅した状態でプラ板で自作しました。
※窓枠はあとで製作します。
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8 車体前部の製作@(エンジン) 本来は、エンジンの上部が下部よりも前後長が少し短いため、上部と下部には段差ができますが、キットパーツでは上下とも同じ前後長になっています。
上部のシリンダーブロックは簡単な形状なので、横幅のせまいパーツをプラ板で自作しました。
また、補器類はボンネットの側面パネルをはずして見える範囲だけを追加、修正しました。
※側面パネルを開けなければ、この作業は必要ありません。どちらにします?
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9 車体前部の製作A(ラジエター) @ちょっと形状が違うような気がするのですが、さすがにプラ板で作りなおすのは難しいので、縦の溝をヤスリで削って深くして、1本づつ間隔が開いて見えるように修正しました。
Aフレーム部のプラの厚みによってラジエターが奥になっていますが、実車はフレーム前端とラジエターはツライチなのでフレームの前側をカットしてラジエターを移動させ、フレーム部は0.14ミリ厚プラ板にリセットして修正しました。
B0.3ミリ厚プラ板に0.5ミリ間隔で穴を開け、0.3プラ棒を植えていきました。接着剤の硬化後に上下を切り揃えてからラジエターパーツに接着しました。
Cラジエターのオーバーフロータンクをひと回り大きくしました。
D基部の金具も再現しました。(タイヤで隠れて見えなくなりますが。)
D裏側には何も再現されていなかったので、カバーを追加
Eファンの位置が少し下すぎるかなあと思い、軸の直下に0.3ミリ厚プラ板をはさんで高さを調整し、さらにプロペラ先端を少しだけ短くしました。
Fフレーム側面をカットして実車と同じ形状にしました。
フロントグリルは車の顔です。ラジエターを前に出すだけでも印象が大きく変わるので、頑張っていろいろ手を入れました。
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10 車体の製作C(屋根) キャビンの寸法を変更しているので、ルーフもキットパーツのままでは使用できません。
床面パーツに合わせて、ルーフパーツも修正しました。
@後部パーツ
たてよこ共に延長しますが、どこか1カ所で延長するとバランスが崩れるので、延長に必要な長さをパーツ各部に分散して、全体的に大きくなるように注意しました。
A前部パーツ
幅は広げて長さを短くしますが、前側はフロントウインドガラスの幅に合わせて横幅を調整しました。これによって側面の角度も変わり、赤いラインでカットしました。
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11 タイヤ スキャンメルシリーズのタイヤ径は13.50-20タイヤが標準ですが、TTは牽引するトレーラーの重量を支えるためにリアタイヤが15.00-20タイヤに大型化されています。
しかし、キットでは他の車種と同じように前後輪全が同じパーツになっています。
リアの4本を大きくするため、アカデミーのドラゴンワゴンのタイヤを使うと径は合うとのことですが、トレッドパターンも違うし悩ましいところです。
今回は趣味でタイヤの3Dモデルを作っているスペインのモデラーAlvaroさんから正しい形状のタイヤを入手することができました。(タイヤの自作は難しいのでとても助かりました。)
タイヤメーカーによって異なるトレッドパターンもちゃんと再現されていて、実車同様いろいろまぜて使うこともできそうです。
また、タイヤ径の拡大に合わせて大きくなった車軸もつけてくれました。
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12 足回りの製作 【前輪】
@板バネとタイヤは入手した3Dパーツ
ホイールの内側も再現されており、別パーツなので角度も変わります。
Aキットパーツの前端だけ0.25ミリ厚プラ板で断面を再現
Bキットパーツはちょっと太すぎたので0.9ミリ径プラ棒でリセット
【後輪】
@タイヤとアクスルは入手した3Dパーツ
A組み上げてみると横幅が広すぎるので、デフケースの両端を0.8ミリづつ短くカットしました。
B上部のブレーキラインは大型タイヤと通常タイヤで形状が違うようなので、大型タイヤ用の形状を再現
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