T-34/76製作記 その1

4号G型のお相手はT-34/76です。こちらも今はやりの3Dプリンターパーツを使って作ります。

1 使用キットと資料

4号G型のお相手は、T-34/76です。
「フォルモチカ砲塔」とよばれる高圧プレス成形の丸い砲塔は、UZTM(ウラル重機械工場)で製造されましたが、今回は情景の設定としては1944年初頭とし、車長用キューポラが追加された1943年型として作ります。

資料によるとキューポラのない42年型と違い、キューポラ付の43年型はChKZ(チェリャビンスク・キーロフ工場)に砲塔を送って、ここの車体に載せて車両として完成させていたようです。独軍と違ってあまり資料がないので、どこの工場の特徴を再現すればいいのかよく分かりませんね。

また、立体資料として、これもずいぶん以前に買ってあったホビーボスの48キットを横に置いて参考資料にします。 これはフルインテリアキットなので、画像だけでは把握できない情報が多くて役に立ちそうです。

2 内装パーツ

今回はクラッシュモデルにします。
最近は3Dプリンター製のフルインテリアキットもリリースされており、中国製のキットを購入しました。 (2023年現在、アリエクスプレスとebayでしか売っていないので、ちょっと入手しにくいです。)
パッケージの右上に「GG model」の名があり、まったく力の入っていないヒヨコのロゴマークがついています。
このメーカー(?)からは76ミリ砲塔版も出ていますが、今回はエンジンが目当てだったことと、なぜか85ミリ砲塔版のほうが少し安かったので、このキットにしました。

一見精密な素晴らしいキットのように見えますが、よく見ると意外に表現が雑で不正確な部分が多いです。
また、切除の難しい奥まった部分にランナーがあって、これは実際に組み立てなどはしないでPCの画面上だけで作ったキットみたいですね。
  (青線で追加した部分など)

3 エンジンの発掘

車体はドラゴンのキットを使い、エンジンと変速機を3Dキットから流用します。
エンジンの前端あたりで車体をカットしてから、エンジン周囲をカットして発掘するようにして必要なパーツを取り出しました。
パッとみても、黄色い矢印のエアフィルターは形がおかしいですね。手本にした人民解放軍のT-34はこういう形なのかなあ。
じっくり検分していくと、いろいろ地雷が埋まっているかもしれません。

ずーっと昔に買ったKORAモデルのレジン製エンジンも手元にあるので比べてみました。こちらも今の目で見ると情報量が少し寂しい感じですね。

ちなみに車体として使うドラゴンのキットとは、2ミリくらい車体幅が違います。
どちらが正確かは手元に諸元がないので確認していません。いつものように現物合わせで作っていきます。

4 車体上部の製作

今回はクラッシュモデルでエンジンを見せるため、エンジンデッキはパネルラインに沿ってカットしますが、レベルキットのように本来は一直線に並んでいるはずのパネルが、ドラゴンでは車体側面に食い込むように段差がついています。
これを一直線にカットしたうえで、車体側面側に残ってしまったルーバーのモールドはパテで埋めて平面にしました。
もちろん開口部の断面は裏から削って断面が薄く見えるようにしてあります。

また、左右のフェンダー上には用途不明のポッチがあるので、全て削り取りました。

カットした各パネルはプラ板なども追加して、別々のパーツにしました。あとで地面に配置します。

5 車体後部の製作

1940年型、41年型の車体後部はエッジがなく丸いお尻をしており、42年型からはシャープな「くの字」になっています。
車体側面パーツもこの後端形状に合わせた形になっていますが、ドラゴンでは後端形状が変更された42年型以降の全てのキットでも、修正することなく丸いお尻に合わせた車体側面パーツを使っています。
このため、車体後部パーツはシャープな「くの字」なのに側面パーツが丸いため、無理やり整合性をとったために面構成がおかしなことになっています。
(レベルやフライホークではちゃんと側面パーツも正しいものになっています。)
このため、車体後端は以下のように修正しました。

・丸いギアカバー上部にコブのようになっている部分をカット
・下部パネルの断面を薄く見せるため、0.5ミリ厚プラ板でリセット

また、下部のギアカバーも終戦〜戦後モデルに多くみられる角ばった形状になっているので、設定に合わせて1943年頃一般的に見られる丸みのある形状に修正しました。

ドラゴンのT-34は間違った再現が多く、パネルラインの溝も太いなど、大味な表現が目立ちます。
今回はクラッシュモデルにするのでこのキットを使いましたが、車両としてきちんと作るなら、他社のキットのほうがいいように思います。(転輪で見えなくなりますが、車体側面のサスも再現されていません。)

6 車体内部の製作

車体内部のパーツを作るときに注意しなければならないのはプラの厚みです。キットとして内側の寸法は考慮されていませんので、当然内側は実車よりも狭くなっています。
切り出したエンジンとトランスミッションを何度も車内に置いて、車体のプラの厚みを考えながら周囲との隙間から逆算して、車内との隔壁やサスペンションの筐体、燃料タンクをプラ板で自作しました。

また、この時点でエンジン左右にあるラジエターも、エンジンの大きさと車内のスペースに合わせてプラ板で自作しました。

7 エンジンの製作

V-2エンジンはKVやJSを始め、戦後もモデファイされながら長く使われたエンジンのため、画像検索などでもけっこう引っかかりますが、その中から大戦中のT-34用を識別するのは難しい作業です。
T-34用でもエンジン上部に円形のエアフィルターがつく前期型と、エアフィルターがトランスミッションの前側に左右に分かれてついている後期型に分類され、1943年頃に切り替わったみたいなので、後期型にしてみました。

3Dモデルのパーツはそのまま使おうかと思いましたが、よく観察すると意外にあっさりというか省略されている部分が多いことに気付きました。パンターカットモデルのときに自作野郎さんの内部再現されたマイバッハエンジンを見てしまい、もう普通のエンジンでは満足できない身体になってしまったので、このパーツもあちこち切り刻んで、飛び出たピストンヘッドやカムシャフトなどをプラ材で自作して、情報量を追加しました。

8 トランスミッションの製作

エンジン同様、よく見ると意外に省略されたり間違っていたりするので、あちこちプラ材で作り直していたら、シロッコファンくらいしか元のパーツが残っていませんでした。
これって送料込みで7,000円くらい払って3Dキット買った意味があまりなかったような気が…(笑)

左右のエアフィルターは本来は左右の燃料タンクの表面にステーがあり、側面から吊り下げられる形になっていますが、この段階では空きスペースを把握するため、いったん床から直立する形でパーツを作ってあります。
また、こまかい配管などは、塗装して車体に組み込んでから追加していきます。

9 足回りの製作@

【サスアーム】
ベースに配置したときにちゃんと全ての転輪が接地するように、サスアームはいったん切り離して0.5ミリ径の真鍮線で角度を変えられるようにしました。
(この段階ではブラブラの状態で、あとでベースに載せたときに固定します。)

【前後誘導輪】
@ 前部誘導輪は軽め穴を開口しました。
   実車画像を見て、軽め穴はモールドよりも大きな穴にしました。

A 後部起動輪は、再現度の高いレベルのパーツを流用しました。
   軽め穴の周囲に補強リブのついた後期型だったので、リブを削り落として穴だけにして中期型にしたほか、ボルトを追加しました。

10 足回りの製作A(転輪)

4号G型を作るときにキューポラを流用した鹵獲T-34のキットには、なんと4種類の転輪がボーナスパーツとしてついている(!)ので転輪を流用して、まぜこぜ転輪を再現してT-34らしさを出してみました。
キューポラといい今回の転輪といい、とてもお得なキットです。

@ 42年型鋼製転輪は、ピンバイスで軽め穴を開けました。
A 鹵獲T-34には穴2つごとに補強リブが入っている「ハーフスパイダー」転輪も入っていました。ただ、内側にも穴がある43年型だったので、今回の設定に合わせるため、内側の穴はパテで埋めて42年型に修正しました。
B ゴム転輪は、燃え落ちた状態を再現するため、周囲をカットしてホイールだけにしました。
 (35ならこういう情景用にゴムなし転輪とか出てるんですけどね。今なら72でもあったりするのかなあ。)
C ドラゴンキットらしく、各種転輪は設計が別々なのか、ハブキャップの大きさがまちまちです。そのため、余った転輪からハブキャップだけを流用して統一しました。

また、ホイールの端には0.3ミリ径プラ棒を接着し、リムを再現しました。

ちなみにこの転輪は、ハブキャップ形状だけでなく厚みも違っていて、ヤスリで削って厚みを揃えました。確認せずにまぜこぜ転輪にすると大変なことになります。また、裏面の穴の径も違うので、サスアームの軸にはめ込むときにもきついのとグラつくのがあります。ドラゴントラップ健在ですね。(苦笑)

11 車体側面の製作

@ 前部フェンダー
車体上下を普通に組み合わせると、前部フェンダーの裏面には大きな押し出しピン跡が残っていて、誘導輪を取り付けることができません。また、前部フェンダーの側面に厚みがありすぎて段差ができてしまいます。
このため、前部フェンダーはカットして、0.13ミリ厚プラ板でリセットしました。

A 側面フェンダー
こちらは厚みは目立たないのですが、ヨレヨレのダメージ表現をしやすくするため0.13ミリ厚プラ板で作りなおし、ピンセットでグリグリやって歪ませました。

砲塔はこれからじっくり検分しますが、まずは車体側の基本工作はこれで終了です。エンジンとトランスミッションの隔壁とか、機関室上部の装甲板などは、塗装したエンジンを組み込みながら現物合わせで作っていきます。

 

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