T-34/76製作記 その2

車体上部を作って、いよいよ塗装です。

1 砲塔の製作@

@T-34のキューポラは、半分づつ両開きになる前期型と、後ろ側だけが大きく開く後期型に分類されるそうです。ドラゴンの1/35のフォルモチカ砲塔にはキューポラ付きがありますが、スケールダウンした 1/72ではキューポラなししかリリースされていないので、今回は前期型キューポラをドラゴンのT-34/85から流用しました。また、うまく砲塔上面に収まるように、周囲を削って直径も少し細くしました。

Aキューポラを載せてもそのままでは右側のハッチと干渉してうまく収まらないので、右側ハッチは天板ごと切り離して0.3ミリほど外側に移設しました。

B後部のベンチレーターカバーも0.5ミリほど後方に移設しました。

C手元に図面がないうえ、丸いフォルムで正しい形状をつかみにくいのですが、実車写真や他メーカーキットなどの画像を見ても、キットの砲塔は自分の思う形状よりも後ろ側のボリュームが足りないような気がして、左右に0.3ミリ厚プラ板を貼って厚みを出し、さらに後部は削って丸みを強くしました。このあたりはM4シャーマンの砲塔と同じで、どこまでやってもゴールがないような気がします。 ま、キューポラを載せるためにいろいろ無理をして帳尻を合わせた…という感じですので、考証的正確性は皆無です。(苦笑)

D少し高すぎる気がしたので、下側を0.5ミリほどカットして車体上での砲塔を少し低くなるようにしました。

E砲塔後部の下側には、プレス時のシワがあるらしいので、少し大げさですが再現してみました。

また、砲耳とベンチレーターカバーはタミヤパテを叩きつけるように塗ってから粗めのヤスリをかけて、鋳造表現をしました。

1.5 砲塔の比較

並べて比べると、砲耳左右の側面に曲がり込むエッジの上下とか、後部の上端などの丸みが強くなっているのがわかります。キットパーツでは「ソフトエッジ」と呼ばれる六角砲塔とあまり差がなく、角をヤスリで削ったあとのほうが箱絵に似たと思います。

2 砲塔の製作A(主砲基部)

@ 前面は別部品なので分割線を追加

A ボルトは、後の工程でくっきりした六角ボルトを付け直すため削除

B こちら側だけ段差があるので再現

C 角をまるく削った

D ボルトは、後の工程でくっきりした六角ボルトを付け直すため削除

3 車体前部の製作

@ 手すり用の大きなホゾをパテ埋め

A 周囲の溶接跡にしては太すぎるのでいったん装甲板とツライチに。
  溶接跡は後の工程でエポパテで再現
  鋳造再現は溶きパテを穂先で叩くように塗りつけて再現

B 抜きテーパーを修正して左右の固定具をプラ板で追加

C 溶接跡にしては四角すぎるので削り落として、あとでエポパテで再現

D ボルトを追加

4 燃料タンクの製作

クラッシュした車体の再現ですので、どのように壊れたのか、ストーリーを決める必要があります。
今回は7時方向からエンジンに被弾した設定とし、車体側面に機関室を貫通するようにピンバイスで開口しました。

そのうえで、燃料タンクの上部を削ってアルミホイルを貼り、外側からブスりと針を刺して内側に向かって穴を広げて、被弾した状態を再現しました。

5 車体後部の製作

各部を塗り分ける場合には、下まで筆が届くようにパーツを塗装してから組み込んでいきますが、今回は焼け落ちた感じにするため、以下の手順で製作しました。

【第1段階】いったん全体を黒で塗っておいて車体に組み込みました。

【第2段階】茶色系の塗料をランダムに置くように塗装して、燃焼後に雨ざらしになって錆びた感じを再現しました。

【第3段階】内部に配管を追加し、開口部の周囲にも構造材を追加しました。

5.5 ボルトの追加

トランスミッション左右のブレーキドラムカバーにはボルトの列がありますが、これを1ケ1ケ移植していては大変です。そこで、アーチャー社のリベットデカールを使ってみました。
これは、水転写デカールの台紙にレジンのポツポツがついているもので、必要な長さにカットして水でノリを浮かせてから貼り付けるものです。
はじめて使ってみましたが、ボツボツと切れてしまうものの、短時間で作業が終わるのでなかなか良い物でした。

6 車体の塗装

車体の後ろ半分は燃えたあとに雨ざらしになって錆が出ている状態としました。

ベースとしてMrカラー129 中島系海軍機色(二式飛行艇を作ったときに余った塗料)と黒で車体を塗ったあと、303チャコールグリーンやサンドイエローで上塗りし、さらに325空自グレーを混ぜて明度をあげた色でドライブラシをかけて車体の基本塗装をしました。

7 ディティールの追加@(砲塔)

@ペリコープは上部の角を丸め、高さを短くカット
 基部も砲塔天面に半分埋まったような形状なので修正

A主砲基部にはいったん削り取ったボルトを再現

Bキューポラ外周に0.14ミリ厚プラ板を長方形に組んだ視察孔を追加
 (内部のペリスコープはフライホークのT-34/85から流用)

C砲塔の形状修正時に削り取った側面視察孔をプラ板で再現

D吊り下げフックは0.2ミリ径銅線をよじって製作

E側面手すりは0.3ミリ径真鍮線でリセット

8 ディティールの追加A(車体)

@各部の溶接跡はエポパテを使い、あえて精度を低くして粗っぽい状態を再現

A機銃は上部に湯口をカットした跡を再現
 防盾は半円状に形を整え、照準孔は位置を下にずらして、穴を小さくして前期型とした

B運転席ハッチ前に跳弾板を追加

C車体側面には砲塔同様手すりを追加

D主砲用具箱は0.14ミリ厚プラ板でリセットし、ピンセットでこじって歪ませた

E燃料タンクは基部だけ再現
 手前側の側面は被弾した状態なので、手すりとタンク基部の一部だけを残しました。

F 0.14ミリ厚プラ板で天板を作ったほか、後部はキットパーツのエッチングを使いました。

塗装が進んでから車体機銃Aの基部の造作をしていなかったことに気付いて追加しました。

9 墨入れ(無効)

追加した部分をリタッチ塗装して周囲に馴染ませてから、いつものとおり油彩の黒で墨入れをしました。…で、ここまで作業をしてから、今回の情景の設定が1944年1月の東部戦線だということを思い出しました。
4号G型を作っているときには冬季塗装にしましたが、時間が経ってT-34を作ったときには設定をすっかり忘れて緑色に塗ってしまいました。へへへ…。

ということで、この時点で白のウエザリングカラーで落ちかけた冬季迷彩を上塗りしました。
これで一安心と思ったら、せっかくの墨入れも潰れてしまいました。

うむー。手戻りが多いですねえ。

10 墨入れ(手戻り)

白の上塗りのためにぼやけてしまった油彩の墨入れですが、ウエザリングカラーは油彩系の塗料のため、すぐに油彩で墨入れをすると、拭き取りのときに白まで一緒に剥がれてしまうおそれがあります。そこで、白の塗膜がしっかり硬化するまで数日放置してから、改めて油彩で墨入れをしました。もちろん溶剤での拭き取りでも白が落ちることはありませんでした。よかった。
また、前段階で白を少しふき取りすぎたかなあと思ったため、この時点で少し325空自グレーをドライブラシして全体的に白の部分を増やしました。【ここまで画像@】

このあとラッカーのチャコールグレーでハゲチョロを描きました。【画像A】

さらにエナメルの黒と茶で雨だれなどのウエザリングを施しました。【画像B】

ハゲチョロは集中力が必要で、車体全体にチマチマと描くのに3日ほどかかりました。エナメルまで終わると、一気に雰囲気が変わるの楽しい作業です。

11 ウエザリング

足回りはピグメントをアクリルのスモークで溶いてジェル状にしたものを穂先でチョンチョンと泥を追加しました。

車体後部はつや消しフラットベースを上塗りしたあと、ウエザリングカラーの錆色をランダムに置き、さらに黒や灰色のパステルをアクリル溶剤で溶いたものを薄く塗り、錆、煤、燃えがらの灰などを表現しました。
ピグメント類は定着力が弱いので車体にはもう触れることができなくなりますね。

タイヤのゴム部が焼け落ちた状態は、車両をベースに固定してから施します。


で、完成です。

 

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