パンターG型 カットモデル製作記 その1

シャーマンに続く久々のカットモデルです。どこまで作り込めるか楽しみですね。はじまりはじまり〜。

1 使用キットと資料

ヴェスピッドモデルは中国の新興企業で、主にパンター系の車両をリリースしています。
ディティールの再現も繊細で情報量が多く、2022年時点で最も出来の良いパンターキットだそうです。(数値で各メーカーのキットを比較すると、ハセガワの古いキットが一番正確な縮尺なんだとか…)

資料はいつものアハパンとグランドパワーに加え、内装画像の多いタコムの35の作例集も用意しました。
実車写真と違い模型の作例は人の目を通して情報が整理されているので、構造や形が分かりやすいですが、作例はA型なので細かい部分の配置の違いなど注意が必要です。
また、パンターは月ごとに細かい仕様変更が行われているので、特定の車両を内装まで正確に再現するのはかなり大変です…というか無理です。

2 内装パーツ

内装は、個人で販売をしているjisaku-yaro工房さんの3Dプリンター製インテリアキット(以下「内装パーツ」)を合体させます。初めて本格的な3Dプリンターパーツを使いますが、こんなに細かい造作で一体なんですね。びっくりです。

パーツ単体で眺めているだけでお腹いっぱいになりますが、見ていても完成しないので作ります。(笑)「サポート」と呼ばれる注型用のランナー部分は、切り離すときに衝撃を与えてパーツを破損させないため、エッチングソーで静かに切り離しました。

3 キットの比較

レベルのパンターは、F型を作ったとき書いたように、車体上面から前面に角度が変わる「折り目」の位置が違います。
全長は同じですが、ヴェスピッドと比べノーズと機関部が長く、逆に中央の胴体部分(画像の青い線)が寸足らずとなっています。
内装パーツはレベル用なので、ヴェスピッドに収めるためにはノーズは短くして胴体部を延長する必要があります。
それでも内装パーツをすべて自作する労力と時間を考えれば、フィッティング調整の時間だけですむなんてありがたいですね。

4 内装パーツの調整@(車体)

完成時にはエンジンルームの左側の補器類はつけないことにしたので、せっかく一体化されていてもったいないのですが、この段階で切り分けます。
ただ、一体で成型のためエンジンは下半分は再現されていません。エンジンは下まで見せる予定なので、別の単体でリリースされているものを使います。 
この時点ですでに自ら苦労を背負い込んでいる気もしますが。(苦笑)

車体内部パーツは、メーカーによる車体長の違いを解消するため…
  @内装先端部を2ミリほどカットして短く
  A操縦席と戦闘室の境目でカットして、プラ板をはさんで0.8ミリほど延長
  Bエンジン隔壁を1.5ミリと厚く作り、戦闘室後部とエンジン部との間を埋めた
  実車と比べて正確ではありませんが、うまくつじつまを合わせることを優先しました。

ちなみに車体下部は、横幅がレベルよりもヴェスピッドのほうが狭いので、内装パーツの横幅を狭めて押し込んであります。
また、砲塔下の床面は、タバコの内紙を貼るという古典的方法で滑り止めを再現したほか、運転席はフィギュアと一緒に造作するため、いったん切り離してあります。

5 外板のカット

「内部のどの部分が見えてしまうのか、どの部分を見せたいのか」を考えて開口部を決めました。
それでもあとになってさらに開口部を広げたり、逆に見えなくていい部分が見えてしまうのでプラ板で塞いだり、手戻りしながら作業を進めました。
もっとあとの工程になって、さらに修正する可能性もあるので、追加の開口作業ができるよう、車体上下は最後まで接着はしないで作業を進めます。

また、ヴェスピッドのパンターのプラは、少し粘り気のある柔らかい素材です。
素材のせいか肉厚で、カットした断面は非常に「重装甲」です。
全体を薄くすることはできませんが、なるべく断面が薄く見えるよう内側を削りました。

6 内装パーツの調整A(砲塔)

砲塔は、内装パーツを使うと車体上面の砲塔基部リングが干渉して隙間ができてしまうので、リングは削ってフラットにしました。
また、内装パーツ底面も削って薄くしたり、周囲をカットして少し小さくしたりして砲塔キットパーツに収まるように調整しました。

車両全体の情報量が多くて確認作業もたくさんあるので、砲塔はあとでじっくり集中的にいじります。
この段階ではまずは車体とのフィッティングまでですね。

7 エンジン隔壁の製作

もともとの内装パーツには、ちゃんと細かいモールドのエンジン隔壁がありました。
パーツ分割のときに削ってしまったので、ここはプラ板で再現しました。
中央に消火器がつきますが、その辺は塗装のあとで追加します。

8 足回りの製作@

車体側面下部も、省略されずにいろいろな部品が再現されています。ダンパーなどのパーツもボルトをプラ棒で再現するなど、情報量の追加をしました。
これは泥で埋めてしまうのがもったいないですね。

ダンパーとあたる第2、第7アームは強度を保つために軸が太くて断面が四角になってるので、プラ板を貼って再現しました。
アームをまっすぐ並べるためにダボがついていますが、勘合が緩くどの部分もグラグラしていてカチリと決まりません。そのため、接着剤が硬化する前にグリグリやってまっすぐに並ぶように位置を微調整しました。

9 足回りの製作A

キットは鋼製転輪と通常転輪の選択式です。
今回は車体側面のカットに合わせて転輪もカットするので、断面が曲面で見栄えのする通常転輪を使いました。

パンターの転輪は3列ですが、真ん中の2列目は転輪が二重なので、キットでは内側が接着面となっていてフラットになっています。(左図の水色の部分) そのため、左図の赤い線でカットしても、内側にはモールドがなく、中身が詰まった状態です。
一方、一番内側列の転輪は1枚なので、表裏両面ともモールドがあります。
そこで、1列目の転輪を裏返して2列目の片側として流用し、カットしたときに中が見えてもモールドがある状態にしました。

これで、2列目をカットしても薄い転輪の断面と内側の空間を再現できることになりました。よかったよかった。
ちなみに余った2列目の転輪(裏面がフラットなやつ)は、車体の反対側で1列目として使いました。実際にカットしてみると、転輪のカーブした断面が見えるのは面白いですね。

上にも書きましたが、軸が細いか穴が大きいのか分かりませんが転輪の位置が定まらないので、軸に溶きパテを塗って太くして安定させました。

10 足回りの製作(おまけ)

転輪は、周囲にゴムタイヤを固定する金具がついているため、リムの形状が表裏で違います。
海外のモデラーさんが指摘するまで気づかなかったのですが、一番内側と、一番外側は同じ形状なはずなのですが、まぜか外側の転輪だけがリム形状が間違っています。一番目立つ場所なのに…。
見なかったことにするか迷ったのですが、精密な足周りのディディ−ルが少しでも見栄えするように、反対側の一番内側の転輪からリムだけナイフではがして持ってきました。

おかげで反対側の一番内側の転輪は、ちょっと見てはイケナイ状態に。
言われなければ誰も気づかない生産性のない作業ですが、つい頭に血が上ってやってしまいました。後悔はしていません。(笑)

11 基本形状の完成

砲塔はまだあまりしっかり見ていませんが、車体を中心に大掛かりな作業が終わり、いったん基本形が出来上がりました。
今はまだすべて仮組みですが、資料とにらめっこして細かいパーツを追加して、塗装をしながら順番に組み込んで接着していきます。
エンジンは手元にあったプロフィキットのレジンパーツですが、これは仮置きで実際には別なものを使う予定です。

今回は、自分の好みで「ツイメリットコーティングなし、アゴ付き防盾」にするので、設定は1944年9月生産車以降ということになります。
パンターは、資料によると室内の塗装指示の変更など、毎月細かい仕様変更が続きます。
また、製造メーカー3社での細かい仕様の違いもありますが、実車再現の完全なリサーチは私には無理なので、雰囲気重視で作っていきます。
  

 

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