パンターG型 カットモデル製作記 その3

砲塔をじっくり作り込むことで、内部の構造や役割がよくわかりました。
資料を読んでいると目新しいことが多く、意外と今までちゃんと見ていなかったなあと思いました。

1 砲塔下部の製作@

各種資料とキットを見比べて修正していきます。
せっかく一体成型なのにちょっともったいないですが、3Dプリンターのパーツはガラスのようにパリンと欠けてしまうので、慎重に作業を進めます。

@ 平行になっていた支柱を、上に向かって狭くなるように修正
A 主砲旋回装置の下部が長いので、カットしてディティールを追加
B 主砲旋回装置のハンドル基部などもプラ材で追加
C 床の油圧装置からの斜めの動力軸(青色)を追加
D 砲塔旋回用の軸(赤色)は、貫通させずに筒の手前に位置を修正

2 砲塔下部の製作A

@ 折りたたまれて再現されていた車長の足台を開いた状態に修正
A 車長席下のコンプレッサーにカバーやパーツ追加
B 床は車体床面と合わせるためにタバコの内紙を貼り、周囲にリムを追加

3 砲塔下部の製作B

@ 砲身にテンションをかける装置上部の滑車位置を修正
A 同軸機銃の薬莢受けを追加
B 薬莢受けから下部の貯蔵箱までのダクトを追加
C 砲塔の手動旋回装置が出っ張っていたので、裏面を削って壁面に密着させた
D 床の油圧装置に吊り下げフックと変速レバーを追加
E 位置的に見えませんが、装填手用シートを折りたたんだ状態に修正

また、各部を車体に合わせてプライマー色とエルフェンバインなどで塗り分けました。
手前の砲手用シートや床面のペダル類は、フィギュアに合わせて製作するためこの時点ではついていません。

4 主砲まわりの製作

主砲の基部は砲塔と一体成型ですが、砲耳部を再現したかったので、いったん切り離してからプラ板で別に作りました。
全体を塗装してから細部パーツを追加したので、追加パーツがわかりにくい画像ですね。

@ プラ板で砲耳ブロックを再現 
A 各部に補器類を追加
B 保護カバーの支柱位置を修正 

5 砲塔内部の製作

通常チッピングを描くときにはジャーマングレーを使っていますが、今回は地色が明るい色なので、チッピングが強くなりすぎないように、少し薄いチャコールグレーを使いました。
また、墨入れはいつもの油彩です。

後部の薬莢受け箱から天井のベンチレーターに伸びる排気ダクトは、1ミリ径のスプリングの中に真鍮線を入れて再現しました。
別に作っている天井のベンチレーターと何度も位置関係を調整しました。

また、主砲下部には金属メッシュを使って保護ネットも再現しました。

主砲左側につく照準器は、あとでフィギュアと合わせて作ります。

砲塔に主砲がつくと、主砲基部の上下の隙間や防盾の厚さの断面が再現できました。
この部分を再現したかったので、キットパーツを切り離して別パーツとして作った甲斐がありました。

6 砲塔上部の製作

砲塔天井裏面に、ベンチレーター、近接防御兵器、ハッチなどをプラ板で追加しました。
ハッチは、背面を開口して開けた状態にするという選択肢もあったのですが、せっかくカットしたエンジンがハッチで隠れてしまうので、閉じたままにしました。

パンターの天井の装甲厚は16ミリなので、1/72だと0.2ミリとかになってしまいます。
さすがに模型としてはそこまで薄くできないので、断面だけを「ウスウス攻撃」して、0.3ミリ厚程度まで薄くしました。

また、キューポラは以前資料でみた断面を再現してみたかったので、頑張って作り込みました。
鋳造の厚みやペリスコープの構造などがわかり勉強になりました。
3Dプリンターなら、どこでカットしてもこのような構造が見えるようなパーツを一体で出力して再現できるんでしょうねえ。
誰か出してくれないかなあ。

後部ハッチとキューポラ内側は、車内色ではなく車体外側の色にしました。
昔は全部を真っ白に塗っていたのが懐かしいです。

7 フィギュアの製作@

車体はプラスチックの厚みで室内が狭くなっているため、フィギュアは肩幅を狭くしたり足を短くしたりして小柄にしました。
服の迷彩は、フィギュアが小さいので現物を見て迷彩パターンが識別できるように、わざと大きく描きました。
決して技術不足で描けなかったわけではありません。(←負け惜しみの言い訳…苦労しました)

【車長】 キューポラから上半身を出すおなじみのポーズではなく、せっかくカットモデルなので、車内からペリスコープを覗いているポーズにしました。
      マフラーは官給品ではなく私物してみました。

【砲手】 椅子とハンドルの位置に合わせてポーズを決めるのも大変でしたが、後ろにいる車長の下半身が干渉するため、この2名の調整は時間がかかりました。
     また、フィギュアに合わせて、床面にペダル類を追加しました。
     あとでフィギュアを砲塔に接着して顔の位置が決まったら、一度切り離してあった主砲の照準器をつけていきます。

【装填手】 プライザーのフィギュアだと頭が天井を突き抜けてしまうので、二式飛行艇付属の日本兵のフィギュアの下半身を使い背を低くしました。
       この人はツナギを着てもらいました。

8 フィギュアの製作A

【操縦手】 ティーガー2やパンター2では椅子そのものに高さ調整機構がついていますが、パンターは本来の椅子の後部に、固定式の補助椅子がついています。
       35のライフィールドモデルではこの形が再現されていますね。
       また、上体をハッチから出して操縦するため、操向レバーにも延長棒がついているので、これも再現しました。
       あまりこのポーズを再現している作品はないので、フィッティングに苦労しましたが頑張って、ちゃんと延長したペダルとレバーの使い方がわかるようにしました。

【無線手】 車載機銃のあるスペースには納まらなかったので、車外に出てジェリ缶を運んでもらうことにしました。(笑)
       今は72スケールでもジェリ缶側面の刻印が再現される時代になりました。ちゃんと武装親衛隊仕様のものを使っています。

9 車体の塗装@

車体基本色の塗装はいつもの工程です。
車内に塗料が跳ねないようにするため、車体上下を接着していない状態で塗装しました。
あとで各部の接合面の調整時にリタッチが必要になるとは思うんですけどね。

@ Mrカラー119 PMLサンドイエローを、柔らかい面相筆を使ってかなり薄めた塗料を何度か重ね塗り
1回塗装するたびに1日乾燥させて塗膜を硬化させると、次に上塗りしたときに下の塗装がはがれてプラの地肌が見えたりすることを防ぐことができます。
A 21 ミドルストーンでドライブラシ
ラッカー塗料の重ね塗りなので、注意しても下地の色がにじんで出てきます。
これを逆手にとって、下地の色と上塗りした色を意図的に混ぜることで、好みの色あいに調色します。
ダークイエローだけを塗るよりも、サンドイエローの上にフィルターのようにミドルストーンが重なることで、自分好みのダークイエローっぽい色にしています。
B 45 セールカラーでドライブラシ
ドライブラシもエッジだけに色をのせると、エッジだけが目立つ昔ながらのドライブラシ塗装になってしまいます。
面にもちゃんと色をつけて、全体として薄い塗膜で色が重なるようにして塗装します。

色を重ねることで、先に塗装した転輪と色が同じになっていくのがわかります。

10 車体の塗装A

パンターには特徴的な迷彩がいくつもあり、どれも再現したくなりますが、今回はカットモデルなので特定の車両をイメージしているわけではないので、緑の面積が大きな、一般的な大戦後期の3色迷彩にしました。

車体を接着してしまうと、内部パーツに筆先が触れて、塗料がついてしまうかもしれません。そこで、各パーツの色の連続性を確認するため、ときどき仮組みしながら、バラバラな状態で塗装を進めました。

塗装の方法は、L70(A)と同じ手法ですね。(↓)
L70no2 (at-ninja.jp)

また、「How to」でも3色迷彩の説明をしています。(↓)
http://hinemogura.at-ninja.jp/howto.html

11 車体外装の製作

・各部の溶接跡は、タミヤのラッカーパテと接着剤を混ぜた物で再現しました。
(詳細はこちら→)http://hinemogura.at-ninja.jp/yousetu.html

・車体側面の予備履帯は、海外のフォーラムでも指摘されているように、なぜか履帯の上下が逆になっています。
 そこで、余っていたキットの履帯を2枚でカットして流用しました。

・消炎排気管は、フィンが24枚だそうですが、キットパーツはかなり細かくて数が多すぎたので、レベルから流用しました。

12 完成

・この中身をプラ板で全て自作することを考えると、とても完成までたどり着いたか分かりません。3Dプリンターキットがかなり再現の高いキットだったので、普通のキットのディティールアップ並みの作業で密度感たっぷりのカットモデルを作ることができました。

・結局キットで大きく修正したのは、@転輪のリムA予備履帯B消炎マフラーの3つでした。
 ヴェスピットモデルのパンターは非常に優秀なキットだったと言えます。

・今回は、「ツィメリットコーティングがなく、アゴ付き防盾の車両」を作りました。
この条件にあてはまるのは1944年10月以降の生産車です。
一方でさらに後期になると、キューポラの周囲にある対空機銃用のリングがなくなるとか、鋼製転輪になるとか、さらに変更があるので、アハトゥングパンツァー誌などをじっくりみながら、車体前側、側面、後部、砲塔と各面ごとに追加するパーツの取捨選択をして細かいパーツを追加しました。

いろいろな画像は完成ギャラリーで!

 

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